部分的に同型射となっているような構造をどのように取り扱うか調べていたが,見つかった構造に関して日本語で書かれた記事やドキュメントが見当たらなかったので,自分用のメモとして書き残します(適宜内容は修正します).

なお,表記方法は次の通りとします.

  • 圏(Category)は黒板太字(例 CとかD
  • 対象(Object)は大文字(例 AとかB
    • Cの対象の集合を|C|で表す
  • 射(Morphism)は小文字(例 fとかg
    • fの始域をdom(f),終域をcod(f)で表す
  • 関手(Functor)は太字(例 FとかG
    • 自然変換(Natural Transformation)はギリシャ文字(例 τ

Restriction圏(制約圏?)

Restriction圏及び逆圏の初出はおそらくGilesさんの博士論文1(→で引用しているcocketらによる論文が初出でした)で,定義はcockettらによる論文2を参照する.
Cについて,任意の射f:ABに対して射f:AAが存在し,以下の4つの条件を満たすとき,圏CはRestriction構造を持つ,あるいは単にRestriction圏と呼ぶ.

  1. f.(ff=f)
  2. f,g.(dom(f)=dom(g)fg=gf)
  3. f,g.(dom(f)=dom(g)gf=gf)
  4. f,g.(cod(f)=dom(g)gf=fgf)

Restriction構造の自明な例として恒等射がある.Restriction構造が恒等射である場合,全域な射だけを考えていることになる. ffのrestriction idempotentと呼ばれる.

恒等射以外のRestriction構造を考えることで弱い同型射を考えることができる.

Restriction圏において射fは,f=gfかつg=ggを満たす射gを持つとき,部分同型射(Partial Isomorphism)と呼ぶ.gfの部分逆射(Partial Inverse)と呼びfで表す.全ての射が部分同型射であるとき,Restriction圏を逆圏(Inverse Category)と呼ぶ.

引用元の論文2だと部分同型射(Partial Isomorphism)はRestricted Isomorphism,部分逆射(Partial Inverse)はRestricted Inverseと呼んでいるっぽい.

Restriction圏C,D間の関手Fが任意の射fに対してF(f)=F(f)を満たすとき,Restriction関手と呼ぶ.

Restriction関手は全域性,restriction idempotent,部分同型射を保存する.